2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

「このようにみごとな世界があるのに、どうしてそれをすこしも味わわずにやりすごすことができるのか」──リルケ『マルテの手記』(高安国世訳)」

「そう、要するに人々は生きるためにこのパリにやってくる。だがぼくには、むしろここでは何もかもが死んでゆくように思えてならない」 高遠弘美先生の『プルースト研究─言葉の森のなかへ─』*1に小説の書き出しについての論考があり、リルケの『マルテの手記…

再読のできる本を発見するよろこび

私の好きな『モンテ・クリスト伯』を翻訳した山内義雄の「二十余年折にふれ坐右はなれぬ書物の一つ」*1として挙げられるマルセル・プルーストの『楽しみと日々』は、1896年にプルーストが初めて世に出した作品集である。二十代前半に書かれた短編小説、散文…